今年はここ最近では一番本を読んだ年だったなぁと思っています。多い時には週2冊読む時もありましたが、これは読みすぎでした笑 仕事やプライベートに支障をきたす読み方は良くないので、今はキープした読み方を心がけております。それほど、本を読むのって私にとってはのめり込んでしまうものです。以前、本を読むことについて記事を書いていたので、ぜひこちらも読んでみてください。
さて、というわけで当初ランキング形式で書いていたのですが、どうも自分の好きな本を順位で書くのが嫌になったので、順不同で5つ、ご紹介をしていきたいと思います。
注意点としては、私が今年読んだ、というだけで出版はずっと以前のものも含まれていますので、悪しからず・・・
そしてバトンは渡された
紅一点というより小説は一つだけ入れさせていただきました。ちなみに漫画のランキングはまた別に作ってもいいかなと考えています。
瀬尾まいこさんの著作ですが、私はこの作品を読んでから瀬尾まいこさんの今書店にある作品はおそらく全て購入して全て読みました。昔から小説はいいなぁと思ったら、その作者の作品は若い頃から現在あるものまで片っ端から読むという癖が私にはあります。
学生時代には、この傾向はさらに顕著でした。ちなみに最初に一人の小説家にどハマりするというのを体験したのは太宰治でした。太宰治を中学生で読む、というのは流行病のようなものだ、という風潮がかつてあったというのは聞いたことがありますが、最近も太宰治って若い子は読むのでしょうか。
さて、話が逸れてしまいましたが、この「そしてバトンは渡された」は瀬尾まいこさんのいろんな著作がある中でも、心がほっこり温かくなる、という点において一番好きな作品です。作品のストーリー構成もこのほっこり温かくなる、を与えてくれるために、とても上手くできています。今これを書いている日は雪が降ってとても寒い日なのですが、そういう時に飲むホットミルクのような感じです。
ただし、ホットミルクであって、シェフが細心の注意を払って作ったスープではありません。なぜこんなことを述べるかというと、小説好きには”深み”を求める方が、少なくない割合でおられるためです。そういう方にはもしかしたら、あまり向いていないかもしれないなとも思います。ちなみに、私も学生の頃はそんな感じでしたので、その頃に読んでいたら、感じ方は今と違ったかもしれません。ただ、これは完全に好みの話ですので、どちらがいい・悪いでもないと思います。読後感もよく、今日はいい気分で眠れそうだって感じになります。
最近の私が小説に求めるものは「さっと読めて、いい気分になれるもの」なのかなと思っています。歳をとると共に段々と趣味嗜好って変わってきますよね。
ということで、さらっと読めて温かい、そんな小説を読みたいという方には今年一押しの小説ですので、ぜひ気になる方は読んでみてください。
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実力も運のうち 能力主義は正義か
この本のよかった点は、頭の中の思い込み・先入観というものをガツンと叩く感動を与えてくれたところです。このガツンと叩かれた感じは下の3つの書籍でも同様に感じました。本を読んでいると、こういう本に出会えるから面白い、そう思います。本書の問題点としては、ちょっと文体的に?読みにくかった、というところです笑
さて、内容としてはマイケル・サンデル氏が能力主義の功罪を、アメリカの分断や大学の機能やあり方というものを絡めながら論じたものかと思います。
能力主義について説明をしようとすると、誤解を招く言い方が含まれるため、かなり言葉を選びます。具体的な例を用いて言えば、社会的に成功していない人に対して「それはその人の努力が足りなかったから」と考えることはないでしょうか。一昔前と比べて、今は奨学金制度もしっかりしており、仮に親が金銭的に恵まれずとも子供が大学に行って学ぶことのできるシステムが作られています。さらに米国の大学では、単に学力が優れているかどうかだけでなく、学校外でのボランティア活動などまで含めて総合的に評価して、その人を大学に入学させるかどうかのシステムが作られています。日本でも似たような感じはありますよね。学力だけなら塾などのお金のある家庭の方が有利ですが、ボランティア活動ならお金がかからないためこの評価基準は平等そうに思えますよね。
さて、こういった前提を踏まえると、特に学歴の高い人はこう考えがちです。「親の所得によって教育機会に不平等はある程度あるかもしれないが、基本的な教育機会は平等に与えられており、仮に金銭的に厳しい家庭の子供であっても、本人が望めば奨学金システムなどを用いて自分の希望する大学に入学することができ、その後希望する企業へも正しく努力さえすれば就職ができる。反対にそれができなかった人は、個人の努力や才能が足りなかっただけ。こう言った理由から、才能と努力によって成功した自分が儲かったり、社会的な信用が増すのは当然で、努力と才能の足りなかった人が冷遇されるのは仕方のないこと」。
つまり、「自分の現在のポジションは(ある程度親や周囲に恵まれたものはあるかもしれないが)自分の才能と努力によって得られたもの」であり、良いポジションにつけていない人は「努力と才能が足りなかったから」と考えること、そしてこの考えを細かい差異はあれど持ったが故に、自分の現在のポジションは極めて正当なものであり、成功していない人のポジションもまた当然であると考える、このことを能力主義と捉えてもらえればと思います。
本書ではこの考えの問題点を、最初に大学の不正入学の話から語り始めます。冒頭で私個人が一番ビビッと来たのは、「親は不正入学させたことを子供に黙っている」という部分です。もし単に高い学歴を子供に与えたかったのであれば、別に不正入学を子供本人に秘密にする必要はありません。親が子供に与えたかったものは、高い学歴を自分の実力で得たという成功体験(もちろん高い学歴そのものも含む)だということが、この背景にはあると筆者は書かれています。
なかなか短文でまとめることの難しい書籍ですが、ぜひ興味を持っていただければ読んでみてください。
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サピエンス全史
より広い視野で人類史を見ることができるという点で、これ以上の良書はなかなかないのではないかなと思います。
著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏の他の本も読みましたが、他の人にも勧めるならまずはこれだと思います。
例えば、これもまた昨年翻訳されてベストセラーになった「スマホ脳」。これでも人類の歴史を考えると、狩猟採集時代に人類の生物としての形は出来上がって、それ以降は年数を考えてみても生物学的な変化はしていないこと、そしてスマホに依存してしまう背景にはこの狩猟採集時代に人類が獲得した性質によるものであるという話がベースにあります。
本書でも、人類史を大きなパラダイムシフトが起きた①認知革命 ②農業革命、③科学革命でまずは区切り、それ以前と以降でどういうように人類はその歴史を歩んでいったかをかなり広い視点で、大変わかりやすく書かれており、最近の書籍を読む上で知識のベースになる書籍だと思いました。ちなみに現在私たちが渦中にいるパラダイムシフトの果ての話は、ホモ・デウスというまた別の書籍になっていきますが、これもまた未来予想図として根拠だって書かれており良書でした。
そもそも、②の農業革命や③の科学革命はなんとなく想像できると思いますが、認知革命って何?っていう方も少なくないと思います。正直、ここが一番個人的には面白かったです。
認知革命は一言で言えば、フィクションを信じ込むことができる能力です。フィクションというのは、夢物語のようなことではなく、「ある特定の集団」とか「神様」とか「愛」とか、実際目には見えないけどあると思えることです。例えば国って言いますが、具体的に見えるかといえば、見えないですよね。国の境界だって、国民だって、五感でわかるような明確な線引きって難しく、他の生物にいくら説明しても理解できない概念に過ぎません。ところが私たちは「いやいや、国はあるから」と、全く五感で感じることのできないことでも概念として理解し、そこにあたかも国という物質があるかのように思うことができます。この能力こそが、ホモ・サピエンスが他の人類種と異なり、そして最終的にはホモ・サピエンスが生き残って行った要因となりました。このことを認知革命と筆者は呼んでいます。
歴史は子供の頃から好きでしたが、今までは細かい事象同士の関連ばかりに気を取られて、大きな流れが見えていなかったような気がします。歴史が好きな方にはもちろんですが、歴史に興味がないという方でも、最近の書籍を読む上でベースになる知識が詰まっていますのでおすすめです。
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DIE WITH ZERO
大学生になって間もない頃、私は親にお金を貸して欲しいと言いました。なんのためのお金かというと「遊ぶためのお金」です。みなさんが親だったら、この提案、どう思いますか?
当時の私の主張としては、医師になったら遊ぶ時間なんて全くなくなるのだから、今まだ自由な時間があるうちに、遊べるだけ遊んでおく、旅行したいところには旅行しておきたい。遊ぶお金を稼ぐためにバイトをするなんて時間がもったいない、借金は医師になって働けば返せるはず、というものでした。
ご想像の通りこの申し出は即却下となり、その後も何度かのディスカッションはありましたが、やはり認めてはもらえませんでした。
「生意気!」「若い頃は苦労すべき」「バイトも人生勉強」「若い時にお金を持つと碌なことがない」「遊ぶための借金なんてとんでもない」といったことをもしかしたら思われるかもしれません。
この話と似たような話が、本書でも登場します。著者の友人が借金をしてヨーロッパ旅行に行ったことについてです。このことに関しての著者の見解は、ぜひ読んでいただければと思います。
さて、お金を使うタイミングにも旬がある、ということは本書で繰り返し語られていることです。全体的な傾向としては、若い頃はお金がありませんが時間と体力があります。中年になってくると若い頃よりはお金があるものの、時間はなく、体力は若い頃よりかはなくなってきます。そして高齢になると、時間とお金は比較的あるものの、体力がなくなっています。世界一周旅行をするのが夢の人は、少なくとも体力のあるうちに行っておかないと叶えることはできませんし、子供への遺産は自分が死んだタイミングで渡しても、本当に子供がお金を必要な時ではないことが往々にしてあります。
単にお金に限らず、自分の人生の考え方を見直す良書でした。ぜひ読んでいただければと思います。
ちなみに私が親の立場でこれを言われたら、やはり一度は却下します。2度目以降は必要な額と使用目的、そしてその根拠、返済プランや利子とその根拠などがちゃんと説明できれば、ある程度力になってもいいかなぁと思ってはいます。お金には旬があり、それが大学生の時であれば存分にお金以上の価値を生み出す可能性があり、そして働き出してからはお金と体力はあっても時間がないという指摘はもっともだったためです。
しかし、大学生時代の私の主張では、無計画で、自己中心的なただのわがままに過ぎなかったとも、今では思います。なんだか自分のことながら、若さを感じます笑
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評価経済社会
これはつい最近読んだ本なので、「最近読んだ本はいい本バイアス」が多少かかっているかもしれません。しかし頭を冷やしても、やはりいい本だろうと思われたので、今回最後にご紹介させていただきました。
以前から気になっていた岡田斗司夫さんの代表作です。これも先ほどの「サピエンス全史」とはまた違った切り口で、人類の歴史を大きく捉え、そして今まさに大規模な変化の途上にある、「評価経済社会」への移行を書いた書籍になります。
もし今、就職や副業、SNS活動などで悩んでいるという方にはぜひ読んだらいい本ではないかなと思います。
本書はもう10年ほど前の本になりますが、その原型である「僕らの洗脳社会」は1998年出版と、20年以上前の著書になります。であるにもかかわらず、現在まさに起こっている変化を、まるで今見て書いているかのように書かれているのには単純に驚きです。著者は、若者の傾向を見ればある程度先の未来を予測することができるというように主張しており、そのうち一番ベースとなる考えが「自分の気持ちが大事」というものです。これ、とても分かりますよね。
「自分の気持ちが大事」という考え方は、現代の私たちにとって当たり前ですが、少し前ではただのわがままに過ぎませんでした。例えば、上でご紹介したDIE WITH ZEROとも絡んできますが、昔は働けるだけ働くことが美徳でした。しかし今、働けるだけ働く、つまりは土日も夜も働くというのはカッコのいいことかというと、どうも違っていますよね。医師ですら、働き方改革と言っている世の中で、若い世代では特にアフターファイブを重んじる人の方が増えてきています。さらに言えば、アフターファイブどころか仕事においても変化は起きています。ステータスや報酬よりも、やりがいや満足感などの気持ちの方が重要になっています。仕事人間で自分の趣味もなく、家族のことも興味なく、ずーっと仕事をしている人が、「家族のために(あるいは日本のために)必死に仕事をしてくれている人」と評価されていた時代から、「でもそれで人生本当にいいの?」と疑問視されるような時代になってきています。
こういった社会の背景には、「貨幣経済社会」から「評価経済社会」への移行があるということを言われています。評価経済社会は、貨幣よりも他者からの評価が重要な世の中のことを指しています。評価をお金で買うことはある程度できますが、かなりの費用がかかり、その割に何かちょっとしたトラブルですぐにその評価は落ちてしまいます。これは売り出し始めのアイドルグループを想像したら確かに、と納得のできるところだと思います。反対に、インフルエンサーなど評価の高い人がお金を得ることは容易いです。企業がスポンサーになったり、広告を依頼することもあります。もし欲しいものがあれば、ファンからもらうことも可能です。
お金を得たら、それで靴や時計、車、家を買い、それがそのままその人の評価にかつては繋がっていました。しかし今はものと評価が繋がりにくい世の中になっています。また、お金を得たら「自分が大切に思うもの」に対してお金を使うことが良いとされており、自分がいいとは思わないステレオタイプ的な商品へ飛びつく若者は今かなり減っています。その代わり、インフルエンサーを支援するような活動や、自分が好きなソシャゲのガチャに課金することも、物を買うことの方がいいと考えていた世代からは理解が難しい消費行動をすることが別に珍しい話ではなくなってきています。
こう言った身近な話題から、より幅広い話までを短くサクッとまとめている本です。
もしかしたらクセのある本だなぁと感じる方もおられるかもしれませんが、おすすめの一冊です。話し言葉のような感じで書いており、本を読むのが苦手な方でも読みやすいと思います。
最後に
いかがだったでしょうか。
情報が溢れる現代社会でも、本の面白さって別格だなぁと思います。気になる書籍があればぜひ読んでみてください。
ちなみにamazonの定額サービス、”Kindle Unlimited”に加入していると、最後の評価経済社会は読み放題に含まれているので、読むことができます。最初無料期間などもありますので、ぜひこれを機に登録されてみてはいかがでしょうか。私は登録して読みたいものを読み、読みたいものがなくなったら解除する、そしてまた読みたいものが溜まってきたら加入する、みたいなのを繰り返しています。参考までに。
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