白血病のきほん

健康と病気について

この記事では白血病という病気のきほんを説明します。

みなさんは白血病という病気に対してどのようなイメージがありますでしょうか。
私が子供の頃、白血病のイメージは「無菌室に隔離されて治療を受けるが、治療を受けても亡くなってしまう病気」というイメージでした。少し話は違いますが、「結核」という病気に対しても、私は同じように「血を吐いて、だんだん衰弱して、治療はできずに死んでしまう病気」というイメージを持っていました。

もちろんこれらのイメージが間違いであることは、医学生になって勉強をしている中で学んでいきました。そして医師になってから、実際に白血病が根治して何年も元気にされている方や、結核の治療を終えて元気な方も多勢診てきました。
こういった誤解は、小説やドラマなどのメディアからの先入観が強くあると思います。結核も白血病もかつては不治の病でした。しかし、医学の発展とともに治療の選択肢がどんどんと生まれてきて、根治ができる人も増えてきました。

この記事では、依然として誤解の多い白血病という病気について、そのきほんを説明していきたいと思います。

白血病って?

そもそも白血病とは何かというと、血液のがんです。
がんって?と思われた方はぜひ下の記事を参考にして頂ければと思います。こちらは”
「がん」のきほん”を説明した記事です。

血液の3要素

血液は液体成分の血漿と血球に分けられます。血漿は60kgの人でしたら3Lくらい、体の中にあるとされている液体です。そして今回重要になってくるのはこの血球です。血球の構成要素に、赤血球・血小板・白血球があります。それぞれ、

  • 赤血球:全身に酸素を運ぶ
  • 血小板:出血を止める
  • 白血球:細菌・ウイルスと戦う

というような役割があります。

これらの細胞は幹細胞と呼ばれる赤ちゃん細胞が、徐々に骨髄の中で成長していき(分化)、しっかり成長した段階で、全身の血液の中に出ていきます。骨髄というのは読んで字の通り”骨の髄”で、全身の骨の内側、特に大きな骨の内側にある場所のことです。用語が多くて混乱してきた、という方は骨の中と思っていただいても大丈夫です。

血球の工場である骨髄で、幹細胞から成長して、しっかりそれぞれの役割を果たせるだけ成長した状態で全身に出荷される、というイメージを持つと分かりやすいです。
そしてこの成長段階で異常をきたした状態が白血病です。

がん化する血球

幹細胞から白血球までの成長段階で、がん化した状態を白血病と言います。そのため、白血病細胞は若い白血球と似たような見た目をしています。がん化、とは細かくはこちらの記事で解説していますので、そちらを参照して頂ければと思います。一言で説明すると、異常な細胞がどんどん増えていく状態です。

白血病細胞は骨髄の中でどんどん増えていきます。そして、本来は若い細胞は全身の血液の中にはそこまで出ないはずなのですが、白血病細胞が体の中で増えていくと、ある時から全身の血液の中にも出てきます。

比較的早く白血病細胞が出てくるものを急性白血病、ゆっくりと出てくるタイプを慢性白血病と言います。ここからさらに細かく、どこ由来の細胞ががん化したのか、ということで分類をされていきます。大きく分けて白血球は骨髄球系とリンパ球系の2種類に分かれます。そのため骨髄球系を由来とした白血病でゆっくりタイプのものを慢性骨髄性白血病、リンパ球系を由来とした白血病で早いタイプのものを急性リンパ性白血病と言います。

原因

現在分かっている原因としては①放射線 ②抗がん剤 ③加齢 ④HTLV-1ウイルス です。
①と②は以前の”「がん」のきほん”の記事をお読みになった方だと「ん?」と思われたかもしれません。これらはがんの治療にも実際使われているものですね。下に治療のことも書いていますが、これらの治療は白血病でも使われることのある治療法です。

どんな治療にも副作用を伴います。「副作用は少なく、治療効果が期待できる」こういう副作用と治療効果のバランスを考えて、私たち医師は治療法を考えます。そしてこの放射線や抗がん剤は、通常の治療量を暴露されるのであれば、基本的には治療で得られるメリットの方が上回ります。忘れてはならないのは、この副作用が起こるリスクは0ではないということです。これらの治療で元々の病気がよくなったとしても、別に白血病を含むがんが数年後に発生するリスクは元気な同い年の方と比べたらやはり高いです。
また、原発事故などの放射線被ばくで、安全域を超える程度の放射線を浴びてしまった場合には、甲状腺癌などの他のがん種もですが、白血病やその他の造血器腫瘍の発生する確率が高くなります。

さて、白血病は実は子供も起こるがんです。ですので、小児で起こるイメージが元々ある方にとっては意外かもしれないのが③の加齢ですね。最近の研究で分かってきたことですが、小児の白血病と、成人の白血病では、起こっている遺伝子異常が異なることが分かってきており、また治療に対する反応性も全く異なっています。ですので、一括りに白血病といっても、細かく見ていくと実は結構違うという面もあるということは知っておいてもよいかもしれません。生まれて間もない頃から幼児期に発生率の高い白血病は、その後しばらく発生率は下がっていきますが、高齢になっていくとどんどんとその発生する率は上がってきます。この加齢に伴って上がっていくというのは他のがん種と一緒です。

④のHTLV-1ウイルスというものは、白血病全般に起こるものではありません。これは成人T細胞白血病・リンパ腫という病気の原因とされているウイルスです。このウイルスは、直接白血病の原因とわかっているかなり特徴的なウイルスです。人から人には性行為や母乳・出産などのタイミングで感染することが分かっています。感染をしても必ず発症するというわけではなく、また感染から数十年の経過で発症することがあるという変わった経過をしています。現在はこのウイルスが”成人T細胞白血病・リンパ腫”という難治性の白血病の原因としてわかっていますので、子供への感染防止のために、妊婦健診などの際には必ず調べられています。

症状

この頃には発熱や体のだるさ、血が出やすくなるなどの症状が出ていることが多いです。

骨髄の中では白血病細胞がどんどん増えているために、正常な白血球や赤血球、血小板の生産が十分にできない状態になっていきます。そのため、血液の中の酸素も十分運べず、体のだるさが出てきたり(赤血球が減るため)、歯磨きの際にいつもより歯ぐきからの出血が増えたり(血小板が減るため)、熱が出て抗生剤などの治療をしてもなかなかよくならない(白血球が減るため)などの症状が出ていきます。

この状態になると、一般内科を受診した場合には「どうも普通の風邪や、ただの貧血ではない」と判断をされ、血液内科(白血病などの造血器腫瘍を専門とする科)に紹介をされると思われます。

検査・診断法

白血病の診断までの流れを説明します。
まず、上で述べた症状(発熱や体のだるさ、血が出やすくなるなど)が出現し病院を受診します。
次に血液検査で、血球の異常を調べていきます。白血球の数が異常に多かったり、血小板の数が異常に少なかったり、本来全身に出てくることの少ない赤ちゃん細胞が目立つ、などです。この段階で一般内科から血液内科に紹介となります。
血液内科受診後に行う検査として、最も大事な検査が骨髄検査です。骨髄検査とは、専用の針を骨盤の中に入れて、中の骨髄液・組織を採取する検査です。

え・・・むちゃくちゃ痛そうなんだけど・・・

”骨髄検査 = 痛い”というイメージもどういうわけか、患者さんから聞くことがよくあります。
骨髄検査が痛い、というのは残念ながら事実です。細かいことを言うと、針を進めていく行程で痛いことはあまりありません。これは麻酔(痛み止め)がしっかり効いているからです。針を進めていき、骨髄液をとるという段階になると痛みがあります。ここには残念ながら麻酔は効きません。声掛けをちゃんとする医師であれば「今から痛いですよ」と合図をした後にこの処置を行います。通常は2回、多い場合は3回行います。痛みは基本的にその瞬間だけです。もし痛みが残る場合は、処置をした医療機関に聞いてください。これの一番多いパターンは、血種という血の塊が皮膚の下にできて痛みが出ているケースです。

さて、この骨髄検査を行って、骨髄の中の細胞を顕微鏡や特殊な機械を用いて検査をします。これらが当日できる施設は限られており、もし一般内科で行う場合は、採取した検体を検査業者に外注するため、数日以上の時間を要します。

骨髄液の中に白血病細胞がいることが確認できた段階で、白血病の診断となります。

治療法

さて、白血病の治療は、特に急性白血病の場合は急ぎます。
その中でも”急性前骨髄急性白血病”という白血病に関して言うと、病院について数時間以内には各種検査を終えて、検査結果を説明し、すぐに治療を開始するというくらいの早さです。これは他のがんでは考えられないほどの早さです。
一般的ながんの診断は、健診異常や何らかの自覚症状で病院に来て、血液検査や画像検査を行い、当日中あるいは後日がんが疑わしいという話がなされます。そして、確定診断のために病変を採取するために内視鏡検査や入院した上で体の内部に病気の組織の部分を取りに行きます。こういった検査には入院が必要な場合もあり、検査を行うまでに1-2週間以上は待つことが多いです。また、最近ではPET-CTという特殊なCTを撮ることも多く、院内に装置がある場合はいいですが、院外にある場合は、この予約もすぐにはとれないケースがあります。こういった検査が済んで、全ての結果が出そろうのにさらに1週間ほどかかりますので、トータルで1か月近くかかり、そこからようやく治療が開始されます。
先ほど、”数時間以内に”という話をしましたが、いかに急性白血病という病気が急を要する疾患かということが想像できると思います。

さて、では実際の治療はどういうものかというと、これはこちらの”がんのきほん”の記事を参考にして下さい。白血病の治療には、①抗がん剤 ②手術 ③放射線治療 ④分子標的薬 ⑤免疫細胞を強める治療 ⑥移植 と、以前お伝えした治療法の内、手術以外が選択肢になります。治療の根幹をなすものは、抗がん剤と分子標的薬です。そしてどうしてもなかなか治りにくい、再発してしまうという場合には免疫細胞を強める治療、造血幹細胞移植(放射線治療含む)などが候補に考えられます。さらに、昨今はがん領域全体の治療法がどんどん増えてきており、標準的な治療法の他に治験薬や臨床試験への参加などの治療選択肢が増えてきています。

治験・臨床試験の裏話

ここでよくある誤解ですが、

治験や臨床試験の参加=医師が自分たちをモルモット(実験動物)にしている!
自分の出世のために利用される!

と聞くことがあります。

これは誤解です。
白血病やがんと診断されたり、あるいは再発と言われて悲しんでいる方に、自分の出世目当てで効くか効かないかわからない薬を処方しようとする医師がいると思いますでしょうか?もしそう思わざるを得ないような主治医であれば、そんな主治医はぜひ変えた方がよいでしょう。

がん領域は一部日本が牽引しているところもありますが、大部分は米国で研究がなされたものを、日本に輸入しているというのが実情です。この輸入の過程で、安全性や効果の必要になります。つまり、米国である程度の効果が期待できた治療法・治療薬を、日本でも再チェックを行って、実際に使えるかどうかを見極めるのが臨床試験・治験です(この二つは言葉は似ていますが、全く違うものです。ここでは説明を省略します)。

さて、これらの試験に患者さんを参加をさせることで、果たして医師は出世するのでしょうか・・・答えは基本的にはNOです。これは試験の規模が全国規模であることや、そもそも医師の出世は一つの研究をサポートしたかどうかで決まるようなものではないことが理由です。もちろん、数をこなせば色々なコネクションができる、その分野の第一人者として有名になっていく、という理由で出世につながっていくと思います。

さいごに

いかがだったでしょうか。
病気一つ一つの細かい知識をみなさん全員が覚える必要は、私はあまりないと思っています。それは医師の仕事だと思いますし、病気の理解をするためにはより細かい知識・より大きな目線でみた知識などが必要だからです。

今回白血病をテーマに書かせて頂いて、ある一つのがんについての、検査から治療までの流れであったり、治験・臨床試験の誤解など、他にも通じる内容をお話できたのではないかなと考えます。

今回の記事がみなさんのヘルスリテラシーの向上につながったら嬉しいです。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。


画像元:Gordon JohnsonによるPixabayからの画像

コメント

タイトルとURLをコピーしました