お金の悩み、健康の悩み、人間関係の悩み・・・いろんな悩みが世の中には多くありますが、そのどれも本質は同じです。私は内科外来をしながら、多くの方がご自身で解決できない悩みを多く持たれている様子をいつも見てき、そして時に相談をしていただいてきました。
病院に来られる方はまだ、「悩み」の状態から脱する可能性が高いです。それは他人に相談をするということができているからです。しかし、病院に来られる方は氷山の一角で、多くの方が「悩み」の状態にいて、苦しんでいると思い、記事にしました。
この記事では「悩み」の本質と”私”が考えるものをまずお伝えします。その上で「悩み」の状態から抜け出すにはどうしたらいいか、解決するにはどうしたらいいかということを3つのSTEPに分けて解説をしています。今回はその第一段階となります。
ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
「悩み」とは
まず悩みとは端的に何かということをお伝えします。
悩みとは、①いろんな問題が重なり合い ②頭の中で処理しきれなくなっている状態
簡単な例を挙げて説明します。
お金に悩んでいる方の一例
例えば、お金で困っている人の場合。浪費癖でお金が貯まらず、家賃も払えていない状態。
ここまでですと、まだシンプルに見えますが、この方の悩んでいる内容をよりみていきましょう。
お金を貯めないといけないのはわかっているけど、友達との付き合いで高いご飯を食べに行くので、そのランチ代とその時の服装やバック・時計などはブランド物にしておかないと他の人に対して惨めに思えてしまう。 会社では休日勤務をしたり、もっとシフトを入れれば収入は増えるが、嫌な上司がいる。上司のことやお金のことをストレスに感じてお酒が必要になる。健康診断では肝臓が悪いと言われたが、お金がないため病院には行けない。もっと働く気持ちはなくはないが、最近体も疲れやすく、健康が不安で無理をしてもいいのかわからない。不安でお酒をますます飲むようになった。 旧友からは転職してお酒は辞めるように言われたが、転職なんてどうしたらいいかわからないし、怖くてできない。お酒をやめるというのは今の状況では絶対に無理。
いかがでしょうか?
なかなか大変な問題を抱えられているなと思われるでしょうか?
これはあくまで私の勝手な創作ですが、外来をしていると、これ以上の悩み、とてもプライベートなことまで皆さんご相談いただきます。だからこそ、こうして記事にして、私の外来に来られずとも、ご自身で解決できる方法をお伝えできればと思っています。
悩みの整理
さて、この方の悩まれている内容を整理してみましょう。
ややこしい問題のように思われますが、整理をしてみることでかなりシンプルになることがわかります。
・お金の問題:交際費、酒代、仕事・転職
・人間関係の問題:友達?、会社の上司
・健康の問題:飲酒、病院への受診ができない、ストレス・不安、肝臓の値、疲れやすい
ざっくり分けるとこのような感じになります。一つ一つの問題を考えてみましょう。例えば最初の交際費。健康に不安があるのに、お金がないために病院に行けないような方が、高いご飯を食べに行ったり、ブランドの服に身を包む必要があるかなと、第三者的に見れば思う方も少なくないと思います。もちろん、これは人それぞれの価値観というものが重要です。
この友達との付き合いが人生における最優先すべきことであれば、他のものでなんとか工面してでも行くべきだと思います。さて、それではブランド物はどうでしょう?これも絶対に必要でしょうか?あなたの健康よりも重要かと天秤にかけてください。高い服やバックを毎回買い替える必要は、個人的には全くないと思いますが、これも人それぞれの価値観です。お付き合いの時に絶対に必要、健康よりも大事ということであれば、そちらにお金をかけるのも良いと思います。しかし、あくまで私の立場で申し上げれば、友人関係が重要とはいっても長期的に持続可能な付き合いをするには、やはり健康は優先度の上位に置いておくべきだとは思います。
優先度をつける
このように一つ一つの問題だけを取り出して考えてみると、取ることのできる選択肢は2、3個のみで、あなたがその優先度をどう考えるかのみで判断していけばいいということがわかると思います。かなりシンプルになる、ということがわかっていただけると思います。
しかし、私たちはこの単純なことが時としてできません。それはなぜか。
それは、問題があまりに重なりすぎているためです。一つ一つの問題は大したことがなくとも、数が多くなればなるほど、わたしたちの脳が処理しきれなくなります。そしてそれは最終的にストレスとなり、本来の判断能力を落とす結果となっていきます。
「悩み」の弊害
「若いうちは悩むのもいいことさ」というセリフはどこかで聞いたことのあるような言葉です。
ある程度であれば私もそうかもしれないなと同意しますが、「悩み」の対処の仕方を知らない状態で悩むということは、いささかリスクが高いのではないかとも考えます。
「悩み」の状態になることの一番の弊害は、思考能力の低下にあると私は考えます。これが起こらない程度の状態はそもそも悩みの状態とは言わないかもしれませんが、上で述べたような「問題があまりに多すぎて、脳で処理できない状態」になっていると、人は視野が狭くなり、問題解決能力が落ちてしまうことが往々にしてあります。
皆さんも、何かに悩まれている方にお会いし、相談に乗ったときに思ったことはないでしょうか。一つ一つの問題を丁寧にこれはこうした方がいいなどアドバイスをしても、行動に移せなかったり、別の問題と重ねて実現できなさそうだと言われたり、とにかく問題の解決につながるような状態になかなか行けないということを経験されたことはないでしょうか。
「悩み」の状態になってしまうと、元々の問題解決能力や頭の良さというものとは特に関係なく、誰でも思考能力は落ちてしまいます。パソコンで同時にいろんな作業をしているとフリーズしてしまうこともありますよね。一つ一つは軽い作業だとしても、重なっていくと止まってしまう。これと同じ感じだと思います。
「悩み」の状態にいる。この弊害によって、第三者的に見ればこうしたらいいのに、という状態ができなくなることがあります。
例えばある集団の中でうまくいかないことが中心となって、いろんな問題に悩んでしまった場合。学校でのいじめや、会社での人間関係がうまくいかない場合。さらに、これらに並行していろんな問題が生じてきた場合、「悩み」の状態に陥ります。
第三者がこういう方の悩みを聞くと「そんなに問題なら、そんな学校・会社は辞めてしまえば?」とアドバイスをすると思います。私もそう思います。この言葉が悩んでいる方に届けばこの問題の解決はできるかもしれません。しかし、多くの場合、この助言はなかなか通らない、あるいは悩んでいる方は”誰かに助言を求める”という発想自体が思い浮かばないこともあります。
一人で処理できない問題を考え続けた結果、自傷行為や逆に他人を傷づける行動を取るなどの極端な行動をとってしまう場合があります。その方が本来の思考能力なら取らないような極端な選択肢をとってしまう、そんなことは十分あり得ます。この背景には言い方は厳しいですが、問題が山積みになりすぎている事による問題解決能力の低下があると考えます。
今回のまとめ
「悩み」については引き続き、YouTubeでも、こちらのサイトでも解説をしていきたいと思います。
今回私から皆さんにお伝えできるものとしては
”悩みとは、①いろんな問題が重なり合い ②頭の中で処理しきれなくなっている状態”であるということを知っておくこと
だと考えています。
これを知っているか、知っていないかだけで、もし「悩み」の状態になったとき、客観的に自分を見ることができさえすれば、「自分は今危険な状態にある」ということが認識できると思います。
今回は初回でしたので、「悩み」とは何かということと、「悩み」による弊害について簡単に解説をしました。参考になれば幸いです。
YouTubeにて音声形式で悩みについて話をしています。ぜひこちらも併せていいていただければと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
参考文献:
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