この1年半のコロナ自粛で、人と会って話をするという機会がだいぶん減りましたね。
私も古い友人と会う機会がなくなって非常に寂しく思っています。早く収束することを願うばかりです。
さて、違う職種の友人たちと話をしていると、その職種のことで「実はそうなんだ!」と驚いたことがよくありました。結構自分以外の職種って誤解も多かったりしますよね。
医師ってドラマや小説で色々語られて、イメージがみなさんの中でも結構あるのではないでしょうか?
今回は、ちょっとしたみなさんの誤解を解きつつ、健康や病気に関する基本的な知識・考え方も交えるような形で記事を書きました。最後まで読んでいただけると嬉しいです。
※この誤解は、私が見聞きしたことのある誤解であって、もしかしたらあまり一般的ではないかもしれませんので、あしからずお願いいたします。
1.急変時には大慌て
※急変=体の状態が急に悪くなること。心臓や呼吸が停止することを指すことが多い。
こういう医療ドラマありますよね。
ベテラン外科医の手術を受けて経過のよかった患者さん。夜見回りで看護師が部屋を訪れると苦しそうにしている。当直の若くて頼りがいのなさそうな医師に電話をすると、上司のベテラン外科医に言われた通り痛み止めで様子をみるように指示をしてきた。本当にそれで大丈夫なのかと看護師が不安に思っているうちに、患者さんの状態はどんどん悪くなり、ついに意識がなくなる。大慌てで看護師は医師を呼びつける「急変です、早く来てください!!」。若い看護師が救急カート(急変した際に使える治療器具や薬が入っているもの)を急いで運ぶが、途中で別の患者にぶつかって、救急カートから器具を落としたりする。患者さんの心臓が止まり、胸骨圧迫を開始する(心臓マッサージのこと)。色々な処置をしようとするが若い医師は慣れておらず、ぐずぐずしていて進まない。ちょっとした看護師のミスに大声で怒鳴りつける。。。現場は大混乱。。。
・・・ないです
細かい違いはあれ、こういうドラマのシーンは、どういうわけかよくあります。
患者さんの急変時の対応というのは、誤解が多いですがドタバタ劇ではありません。急変時にどういう対処をするかは、きっちりとマニュアルがあり、医師も看護師もそれを熟知しています。
急変の可能性があるかどうかも、事前に察知できることが多いです。この場合、医師間・看護師間で申し送りをするのが普通です。もちろん察知しきれないこともありますが、そういった場合でも淡々と対応を行っていきます。
しかし一点残念ながら、真実もあります。
それは、怒鳴る医者はまだ一定数いるということです。これはとても嘆かわしいです。
先ほどお伝えした通り、急変時の対応はマニュアル通り淡々と行われるものです。ただし、それと同時に人の生命がかかっていますので、当然緊張感をもってスタッフ一同で対応をします。そんな中に一人怒鳴って余計な緊張を煽る人がいるとどうなるか・・・想像はできますよね。
急変時の対応:一般の方向け(日本医師会より)、ALCS、AHAガイドライン2020ハイライト
2.麻酔科医は医者じゃない
まず最初に答えから。誤解です、医者です。
麻酔科の先生も、他の科の医師と同じく医師です。どうしてこういう誤解が生まれてしまっているのか、理由は存じません。もしご存知の方がいたら教えてください。
麻酔科の先生、ごめんなさい。何度も患者さんから聞かれたことがあり、この誤解を書かせて頂きました。
ただ、ここ最近は「麻酔科医ハナ」など、麻酔科の医師をピックアップした漫画も出てきており、あまり聞かなくなりました。
同じように時々聞く誤解としては、
外科医になるのは学生の内に決まってるんでしょ?
指先が器用で体力のある人が選ばれるんでしょ?
これも誤解です。学生の内に志望する科を決めている学生さんもいますが、外科医になるかどうかの最終決定は、働き始めてからです。
私たち医師は6年間の大学生活を終え、国家試験に合格すると、”初期臨床研修”という2年間の研修が始まります。世に言うインターンです。学生の時にも現場で見学をさせて頂くことはありますが、あくまで見学です。研修医になると、実際に”患者さんの診察→診断→治療→経過を診る”という一連の流れの全てを担当します。時々研修医と学生も同じと誤解される方もおられますが、研修医は国家資格をもった医師ですので学生と立場は全く異なります。
研修の中で、外科が向いているのか、内科が向いているのか、麻酔科が向いているのかなどの進路を考えます。そして大体の医師が2年間の研修が終わる前までには、それぞれの進路を決め、それぞれの科でさらなる研鑽を積んでいきます。この進路決めの時にも特に試験などはありません。
ちょっと違うのは歯科ですね。歯科は、そもそも大学の学部が異なっています。医師になりたければ医学部の医学科、歯科医になりたければ歯学部の歯学科を受験しなければなりません。
3.医師同士で命の大切さを熱く語り合う
こんな医師はいません。とても誤解を招く言葉ですが、真意としては
命が大切なのは当たり前
だからです。
医療ドラマではよく、自分の出世などのために患者の命をないがしろにする医師が描かれます。そして正義感に溢れた主人公が止める、というのはあるあるですよね。盛り上がりますよね。
しかし、医師が患者の命をないがしろにすることなんて、まずありません。命が大切なのは当たり前、それは医師に限らず、みなさんもそう思っている人が大半だと思います。
いやいや、そんな医師もいるから!
残念ながら例外が少数いることは事実です。しかし、もしかしたら実際は命をないがしろにしているわけではないけれども、患者さんやその家族がないがしろにされているように感じてしまう、というケースもあると思います。説明の態度や伝え方が悪かったりする場合ですね。しかし実際、裏ではどういう治療をしたらよいかを必死に考え、対策を練ったりしてくれているかもしれません。
また、現代の日本において他のどの職種よりも、医師は人の死に近い職種であるため、もしかしたら「死」というものに、あまりにも淡々としていて、人間味を感じないということがあるかもしれません。
これはこの職業柄、私たちが身に着けていかざるを得ないスキルでもあります。詳しくは、シンパシーとエンパシーという概念をお話する必要がありますので、また機会があればお話しいたします。
逆に命の大切さをわざわざ声を大にして言う医師は、何かやましいことでもあるのかなと思ってしまいます。もちろん学生や一般の方向けの講演などで言われるならまだしも、医療関係者しかいないカンファレンス(患者さんの治療方針などを決める会議のこと)の場で公明正大に命の大切さを説くというのは、その医師が変わっているか、あるいはよっぽどその病院がおかしいのか、かなり例外的なケースだと思います。
今回の記事で、三つとも知っていたよという方はおられますでしょうか。医療関係の方じゃなくて知っていたとしたら、よほどの情報通ですね!
健康や病気に関する基本的な知識・考え方を身に着ける上で、病院の誤解などがあるとやはり邪魔になりますので、こういう本筋とは少し異なるかもしれない小話も時々させて頂ければと思います。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
※当サイトでは病気や健康に関する基本的な知識・考え方をお伝えしておりますが、一人一人の健康・病気に合致した正しい情報でない場合もあります。健康状態にご不安がある場合などは、信頼のできる医療機関を受診ください。
コメント
こんにちは。私も一児の父です。
興味を持って読まさせていただきました。
読み応えありました。
今後も貴殿をしっかりフォローしていきたいです。
よろしくお願いします。
かつみ
かつみさん
コメント下さりありがとうございます。
これからも定期的に更新をしていきたいと思っております。
下記のSNSにてほぼ毎日、情報発信をしていますので、もしご興味があればまた見てみてください。
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これからもよろしくお願いいたします。
内科医父さん