「えらい」「しんどい」は伝わらない!【患者力を高める①】

健康と病気について

今回は「患者力を高める」ということについて話をしていきたいと思います。

みなさんは何か困った症状があって病院に行ったのに、どうも話半分にしか聞かれず、本当に理解されたのか不安になったことはありませんか?ちゃんと診断されたのか不安な気持ちのまま出された薬を飲むのも不安ですよね。

もちろん、担当した医師がしっかりと患者さんの話を聞き、診察や検査を行った上で診断・治療を行うというのが大前提です。
しかし、ここではあえて、みなさんに「患者力を高める」ということについてお話をしたいと思います。
今後もこちらはシリーズでお伝えたいと思いますので、ぜひこれからの話も読んでいただけると嬉しいです。

「患者力」という言葉は、一般に「患者主導の医療」という意味で使われることが多いです。
私は「ヘルスリテラシー(病気や健康に関する基本的な知識とそれを扱う能力)を持って、病院を自分の健康や幸せのために、ちゃんと利用できる力」のことと考えています。

「えらい」「しんどい」って?

みなさんは、例えば「胸がえらい」「胸がしんどい」と聞いたら、どういう症状を連想しますか?胸が痛い息が苦しい胃が重たい・・・このように「胸がえらい」あるいは「胸がしんどい」という言葉は、実はよく聞くと全く違う症状の場合があります。

胸がえらいというのは、具体的にどのような感じなのですか?」と、あまり慣れていない医師だと直球で聞くこともあると思います。しかし、体調が悪くて来ているときに、この質問の意図はきっと患者さんに届くことはなく、「だから胸がえらいんですって・・・」と会話のキャッチボールが成り立たないことがあります。

医師の思考回路

私たち医師は患者さんやご家族から伝えられる症状を、いったん医学用語に全て変換しています。「胸がえらい」→「胸痛」、「胸がしんどい」→「呼吸苦」などといったように。こうすることで診断の幅を広げたり、逆に絞っていく作業を頭の中で行っています。

この工程に時間がかかってしまうとどうなるか・・・本来は話をちゃんと聞いてということが何より重要なのですが、次々に来られる患者さんに誠意をもって対応するためにも、ある程度の時間で話を区切り、診察や検査に移っていかざるを得ません。

さて、ここまでの話を読んでお分かりいただいた方もおられると思いますが、こういう「幅のある言葉」はなるべく避けて頂いた方がよいです、というのが今日のポイントです。

「幅のある言葉」は避ける

幅のある言葉って?

「幅のある言葉」とは、「しんどい」「えらい」や、「気分が悪い」、「めまいがする」、「元気が出ない」などです。
「気分が悪い」は食べたものを吐いてしまいそう、という意味でつかわれることもあれば、意外かもしれませんが全身のだるさを表すために使われる方もいます。
また、「めまい」というのはれっきとした医学用語ですが、一般的に使われる「めまい」が医学用語の「めまい」と一致していることは、私の経験上は半々程度です。「めまい」にはそもそもその中に種類があります。ここでは多くはお伝えしませんが、①目の前がぐるぐる回る「回転性めまい」 ②体がふわふわする感じの「浮動性めまい」 ③たちくらみがする「眼前暗黒感」 の3つに分けられています(出典元によって4つにわける場合もあります)。しかし「めまい」には、吐き気がする、頭痛がする、体がいつもよりもだるいなどの別の症状で言われている場合も数多く診てきました。
ちなみに「貧血がある」と患者さんが言う場合は、基本的にはこの「めまい」の内、「浮動性のめまい」や「眼前暗黒感」の場合が多く、医学用語としての貧血(赤血球の数が基準値よりも少ない)という意味でつかわれることはあまりありません。このことは医師であれば基本的に知っていることですので、「貧血があるというのは、体がふわふわする感じですか?それとも立ち眩みがするのですか?」などと追加で聞くことがあると思いますので、自分の症状はどうなのかということを考えてみてください。

貧血についてはPostPrimeの方で記事にしているのでぜひ読んでみてください。

【朝の健康雑談 Vol.16 貧血】 おはようございます😊 ... | 内科医父さん | PostPrime
【朝の健康雑談 Vol.16 貧血】 おはようございます😊 水曜日の朝、いかがお過ごしでしょうか? ... ...

私たちは日本国内の場合、同じ日本語で喋っているので伝わるはず、と思い込んでいますが、そんなことばかりではありません。日常生活でもそうですよね。

コミュニケーションエラーは医師-患者間でも

先生に話があんまり伝わってないなぁ・・・

こう思われたことはないでしょうか。
コミュニケーションエラーは残念ながら医師-患者間でも起こってしまうことが多く、患者さんにとっては不利益しかありません。もちろん医師はプロですから、患者さんの言葉の真意をくみ取って診断をしていかないといけませんが、ぜひ皆さんも「もしかしたら誤解をされているかもしれない。別の言い方で伝えてみよう」と考えてみてください。誤解が解けて、よりよい医療が受けれる可能性が上がると思います。

具体的な言い回し

たとえば「胸がしんどい・辛い」場合。
まずは痛みなのか、吐き気なのか、不快感なのか、苦しいのか、考えてみてください。痛みであれば胸の内側なのか外側なのか、右側・左側なのかあるいは一点だけなのか全体的なのか。時々体中が痛い!とおっしゃる方もおられますが、細かく聞いていくと頭から足先まで全てが本当に痛い方にはお会いしたことはありません。全部が痛いようでも痛くない場所はきっとあるはずですので、痛いところを一つ一つ教えてください。全身の痛みの分布で診断につながる病気もあります。
苦しいや不快感というのも幅の広い言葉ではありますが、それでも「しんどい・辛い」よりは一歩進んでいます。例えば息が苦しい場合も吸う方が辛いのか、吐く方が辛いのか、動いたら苦しくなるのか動かなくても苦しいのかなど教えてください。

具体的に考えるには、自分を客観的に見ていく必要があります。ですので、症状で辛い時にそんなことできない!という気持ちももちろんわかります。可能な限りで構いませんので、医師から聞かれることになるべく具体的に、幅の狭い言葉でお伝え頂ければと思います。きっとそれが、患者さん自身のより正確な診断・治療につながっていくと思います。

今回は少しふわっとした「患者力を高める」話の第一回、”幅のある言葉”は避けよう、というテーマについてでした。。
皆さんのお役に立てれればうれしいです。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。


※参考文献 日本神経治療学会国立循環器病研究センター

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